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不動産マーケットの現状と今後の見通し

日本の不動産市場は、100年に1度と言われる世界的な金融危機や景気後退により、昨年の夏以降、大きな調整局面を迎え、厳しい状況が続いている。

今回の不動産市況の悪化は、一見すると昨年9月のリーマンショックに端を発しているように見えるが、サブプライムローン問題による信用リスク市場の混乱は、さらに遡った2007年頃から現われていた。

当時の日本は、大都市を中心に不動産市況全体に明るい兆しが見られていた時期であったが、世界的には、投資家が急激にリスク回避指向へと転換していたのである。投資資産の選別や投資基準の厳格化が進み、リスクの高い資産は売却して資金を引き上げる動きへとシフトした結果、2007年7月以降、世界的なREIT市場は大きく下落した。

外資系の資金が引き上げ始めた後も、日本の市場は企業の設備投資や個人消費の増加に支えられて着実に回復していたものの、昨年の秋に世界的な大恐慌の波をまともに受ける形となり、不動産価格の上昇トレンドは、わずか2-3年で終止符が打たれることになった。

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出所:日本不動産研究所「市街地価格指数」により弊社が作成
*注 2000年3月を100とした場合の地価指数 

需要は急激に冷え込んで不動産取引は一気に減少したが、今回の市況悪化の特徴は、価格上昇の著しかった大都市中心部ほどその影響が顕著なことである。

これまでの不動産マーケットは、物件の選別や二極化、個別化がキーワードであった。いわゆる優良物件の価格は、価格上昇期に大きく上昇しても価格下降期にはそれほど下落しないものであったが、昨年秋以降の価格下降局面では、価格上昇率の大きかった地域ほど揺り戻しが激しく、人気物件・地域が挙って大きく下落した。

需要面で現状のマーケットを少し細かく見てみると、特に不動産投資の需要が大きく減少しているのがわかる。そもそも今回の価格上昇期は、都心部を中心とした海外の資金流入による不動産投資が火付け役であったが、その後本格的な市況の回復には至らなかったことから、投資需要の急激な減少による反動は大きかったのであろう。市況悪化とともに利回りも急激に上昇している。

日本不動産研究所のアンケート形式による投資家調査によっても、ここ数年間高水準で推移していた投資意欲が昨年に入って急激に減退しており、本年に入って当面新規投資は控えると答えた投資家が、積極的に投資を行うと回答した投資家を上回った。また、近年底をうかがって低位で推移していた期待利回りも上昇に転じている。

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出所:日本不動産研究所「投資家調査」により弊社が作成
*注 「今後1年間の不動産投資に対する考え方」のアンケートに対し、Yesは積極的に投資を行うと回答、Noは当面新規投資を控えると回答した企業又は投資家:%は有効回答のうちの割合

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出所:日本不動産研究所「投資家調査」により弊社が作成
*注 丸の内・大手町地区、最寄り駅から5分以内、築5年未満、延床面積5万㎡以上、基準階面積1500㎡以上、天井高2800mm以上のAクラスビルの期待利回り

なお、投資対象については、リスク回避のためより安全なものへとシフトする傾向にあり、下記のとおり、リスクの高いと思われる郊外型ショッピングセンターや物流・倉庫、ビジネスホテル等への投資意欲は1年前に比べて大幅に減少している。

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出所:日本不動産研究所「投資家調査」により弊社が作成
*注 今後1年間で新規投資を積極的に行う場合、検討する投資対象、有効回答のうちの割合

一方、首都圏では実需を中心とした取引が増加に転じる動きも見られている。

価格下落局面に入り、売主と買主との価格交渉が困難なケースも多いが、価格の下落による値頃感等から、水面下にあった需要が限定的とはいえ表面化しつつある。企業設備の集約化に伴う取得需要や個人の住宅購入意欲の他、公益法人等の新規取得需要など、日本の不動産市場にも僅かではあるものの、明るい材料は見られるようになっている。

財団法人東日本不動産流通機構の集計数値によれば、本年に入って取引は全般的に上向きで、4月以降では、土地、中古マンション、戸建住宅(新築・中古)ともに取引件数は増加傾向にある。また、価格の下落圧力は依然として働いているものの、在庫も徐々に減少している。

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出所:東日本不動産流通機構集計数値より弊社が作成
*注 土地(面積100〜200㎡)の成約件数

では、今後の見通しはどうなのであろうか。

直近では、不動産投資熱の過熱感によるマーケット内の調整、つまり価格の揺り戻しは一段落したと見ることができよう。また、上記のような好材料も出始めてきたものの、現在の価格下落局面が底を打つ気配は未だ見られていないことから、今後の見通しについては、先行き不透明感が根強いことも確かである。

まずは世界経済の今後、そして日本経済や政権の行方も気になるところである。

日本の不動産市場は、世界の経済活動と資金にかつてないほど密接に関連しあっているため、これらの外的要因を無視しては今度のマーケットの動向を語れなくなっている。

最も懸念されていた米国経済については、連邦政府だけでなく州政府レベルにおいても住宅需要喚起のための様々な施策が展開された結果、住宅市場に回復の兆しが見られることを受け、懸念されていた余震はとりあえず回避されている状況にある。オバマ新政権が矢継ぎ早に打ち出した様々な施策の全体像が見え始めていることから、サブプライム問題に対するこれらの実効性に期待するところである。

また、市況の改善には国内の景気回復が不可欠である。

これまでの経験から、日本経済の成長は不動産市場の回復に直結しないことも多かったが、個人消費、企業の投資意欲、ひいては不動産ファンダメンタルズは景気動向に大きく左右されるからである。

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出所:日本不動産研究所「市街地価格指数」及び内閣府発表のGDPにより弊社が作成
*注 全国平均及び6大都市平均の市街地価格指数の変動率と経済成長率の推移

日本経済の先行きについては、大手シンクタンク等の景気動向予測を見ると、2010年以降は緩やかな回復が見込まれると予想するところが多い。

不動産市況は、景気の波に数年遅れて追随するケースが多いことから、これらの予測が正しければ、今後数年をかけて調整局面を乗り越えながら、少しずつ回復の方向へと向かっていくと見ることができる。

なお、東京のオフィス市場は、現在もなお市況悪化が深刻な状況にあるが、専門家の間では、空室率は今後も上昇をし続け、特に都心3区の賃料は2011年まで下落していくものと予測されているため、都心部の商業地域の市況回復はこの時期が一つの転機となると考えられる。そして、都心部の回復は徐々に周辺部へと波及していくものと予測される。

他方、見逃してはならないのは、海外の資金流入とは無縁だった地方圏の大部分の地域である。これらの地域は、景気の波によって下落率の変動はあったものの、バブル崩壊以降ほぼ一貫して価格の下落傾向が続いているのである。

ここ数年来、大都市の人口集中は留まるところを知らず、地方圏の人口流出や高齢化問題、経済活動の低迷等によって、大都市圏との格差は年々不動産価格面でも広がっているのである。地方分権が遅々として進まない中、大きな政策転換がない限り、今後もしばらくはこの傾向が続くものと考えられる。

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